目次
定電圧回路
入力電流や出力電流が変化したときに、出力電圧を一定にするための回路が定電圧回路です。安定化した直流電圧を負荷に供給します。
定電圧回路の種類
定電圧回路にはリニア方式とスイッチング方式があります。
リニア方式にはシリーズレギュレータとシャントレギュレータがありますが、現在使われているものの多くはシリーズレギュレータです。シャントレギュレータは消費電力が大きいなどの理由で、ほとんど使われていません。
リニアレギュレータ
シレーズレギュレータとシャントレギュレータの原理を表す回路図は次のようになります。
rは電源の内部抵抗、Rは可変抵抗、Roは出力抵抗、Eiは入力電圧、Eoは出力電圧、Ioは出力電流(負荷電流)を表します。
それぞれのレギュレータで可変抵抗の位置が異なります。シリーズレギュレータでは直列に、シャントレギュレータでは並列に挿入されます。
そのため、シャントレギュレータは無負荷の状態でも、常に可変抵抗に電流が流れています。
出力電圧
それぞれの出力電圧は次の式で表されます。
- シリーズレギュレータ:\(E_o = E_i – (r+R) I_o\)
- シャントレギュレータ:\(E_i = r ( I + I_o) + E_o\) より、\(E_o = \frac{E_i – rI_o}{1+f/R}\)
制御がなければ、入力電圧Eiや出力電流Ioが変動すると、出力電圧Eoも変化します。そのため、可変抵抗Rを制御することで出力電圧Eo一定にします。
各リニアレギュレータの可変抵抗Rを変化させたとき、出力電圧の変化は次の図のようになります。
スイッチングレギュレータ
スイッチングレギュレータは下の図のように、次の3つのブロックで構成されています。
- DC-DCコンバータ
- 発振器
- 制御回路(基準電圧、比較回路、増幅回路、デューティ比または周波数制御回路)
DC-DCコンバータは電圧変換を行います。制御回路は、現在の出力電圧とリファレンス電圧の差をゼロに近づけるように、発振器のデューティ比または周波数を変化させます。
制御方式
制御回路はDC-DCコンバータのスイッチを制御して、スイッチングレギュレータの出力電圧Eoを一定にします。具体的には、発振器を調整してFETのゲート電圧を制御します。
制御方法は、パルス幅制御(PWM: Pulse width modulation)と周波数制御(FM: Frequency modulation)があります。
前項および次項の図はパルス幅制御の降圧形(Buck形)コンバータの例です。
原理
この降圧形コンバータの動作状態は2つあります。(1)スイッチがオンのときと、(2)スイッチがオフのときです。
- スイッチQがオンの間、コイルにはEi側から電流が流れ、エネルギーが蓄えられる。
- ある時刻t1でスイッチQがオフになると、Eiからの電流がなくなる。
- しかし、コイルが同じ向きに電流を流し続けようとする。ダイオードがオンすることで、コイル電流はダイオードを通って流れ続ける。
- オフ期間に、コイルに蓄えられていたエネルギーがコンデンサに移る。
これを一定周期で繰り返すことで、負荷に電力を供給します。
昇降圧比
昇降圧比G(=Eo/Ei)はデューティ比D(=Ton/T)に比例します。
ON期間を長くすると平均電圧は高くなり、短くすると平均電圧は低くなります。
パルス幅制御の場合、入力電圧や出力電流に応じてデューティ比を調整することで、出力電圧を一定にします。
他励式と自励式
パルス幅制御(PWM)と周波数制御(FM)のスイッチングレギュレータは発振器を持っています。このように発振器を持つものが他励式です。
自励式のスイッチングレギュレータもあります。自励式レギュレータは自励発振をしていて、発振器はありません。入力電圧が変化するとデューティ比が変化して出力電圧を一定に保ちますが、その際、オン期間の長さだけが変化するため周波数も変わります。
リンギングチョーク形コンバータが自励式に該当します。
比較
シリーズレギュレータとスイッチングレギュレータの比較です。
項目 | シリーズレギュレータ | スイッチングレギュレータ |
---|---|---|
効率 | 低い (入力電位差によるが30~80%程度) | 高い (80~95%程度) |
大きさ・重さ | 大きい・重い (主に放熱部品) | 小さい・軽い |
安定性 | 良い | 普通 |
ノイズ | スイッチングノイズなし (直流動作のため) | 多い →放射・伝導ともに対策が必要 |
出力電圧 | 入力電圧以下 (降圧のみ) | 入力電圧以上も可能 (昇降圧) |
出力インピーダンス | 小さい | シリーズレギュレータより大きい |
出力リプル電圧 | 小さい | 大きい (出力電流と出力コンデンサのインピーダンスによる) |
過渡応答速度 | 速い (トランジスタの応答時間のみ) | シリーズレギュレータより遅い |
ワイドレンジ入力 (AC100~250V) | 困難 | 対応 |
信頼性 | 高い (部品点数が少ないため) | 普通 |
絶縁 | 困難 (商用電源トランスが必要) | 容易 |
各レギュレータの特長は次のとおりです。
- シリーズレギュレータが有利な点
安定性、過渡応答速度、信頼性、ノイズ、リップル電圧 - スイッチングレギュレータが有利な点
効率、大きさ・重さ、昇圧できること、ワイドレンジ対応、絶縁が容易なこと
まとめ
- 定電圧回路には、リニア方式、スイッチング方式がある。現在はリニア方式は、ほとんどがシリーズレギュレータ。
- リニアレギュレータは、回路内の可変抵抗を制御して出力を安定化する。
- スイッチングレギュレータは、スイッチを制御する発振器のパルス幅または周波数を制御して出力を安定化する。
- スイッチングレギュレータには、発振器を持つ他励式と、発振器を持たない自励式がある。自励式はリンギングチョーク形コンバータが該当。
- シリーズレギュレータの特長は、ノイズが少ないことや、安定度や応答速度がよいことである。
- スイッチングレギュレータの特長は、効率が高いこと、昇圧が可能なこと、絶縁が容易なことなどである。
参考文献
落合政司 著 「スイッチング電源の原理と設計」(オーム社)
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