抵抗の消費電力

電流制限抵抗について書いたときに、抵抗の消費電力に触れるのを忘れてました。

例えば、100  V(直流)の電源でLEDを1個だけ光らせるための制限抵抗って小型の抵抗で大丈夫なの?って話です。(あとで計算してみますね。)

電源電圧が高いとか、LEDに流す電流が大きめのときは気にしておいた方がいいです。

抵抗の定格電力

抵抗のデータシートには定格消費電力が書いてあります。一例として、ロームの抵抗のデータシートから定格電力の部分のキャプチャです。

抵抗の定格電力

抵抗で電力が消費されるとほぼすべてが熱になります。そして、抵抗が耐えきれないぐらいの電力が消費されると抵抗が燃えます。

抵抗の種類

抵抗の種類と定格電力をざっと一覧表にしました。数値は参考程度に見てください。

種類定格電力 [W]
カーボン抵抗1/8~1/2
厚膜/薄膜 金属皮膜抵抗1/16~5
酸化金属皮膜抵抗1~5
セメント抵抗2~30
放浪抵抗5~100

ほかにもいろんな抵抗があります。抵抗の種類について興味があれば「抵抗&コンデンサの適材適所」の本がおすすめです。

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消費電力

消費電力の公式

消費電力の公式はこちらです。

\[ W = V * I \]

上記の公式にオームの法則の式を代入すると別の公式も導かれます。

\[ W = I^2 * R \]

\[ W = \frac{V^2}{R} \]

抵抗の消費電力Wは、電流Iや電圧Vの2乗に比例して増えていきます。

消費電力の計算

冒頭の「100 Vの電源(←直流です!)でLEDを駆動する」ときの制限抵抗値Rと消費電力Wを求めてみます。

LED直列回路
条件はこれです。
  • LEDのVF = 2.2 V
  • LEDは1個・30個・50個をそれぞれ直列に接続
  • LEDに流す電流は20 mA

LEDが1個のとき

  1. LEDと抵抗に流れる電流をIとすると \(I = 0.02\)
  2. 抵抗にかかる電圧をVR1とすると \(V_{R1} = V – V_{F}\)
  3. 求める抵抗値をR1としてオームの法則よりR1を求める
  4. このとき抵抗で消費される電力W1を計算する

\[ R_1 = \frac{V_{R1}}{I} = \frac{V – V_{F}}{I} = \frac{100 – 2.2}{0.02} = 4990 \]

となり、4990 Ωの抵抗を直列につなげば20 mAの電流が流れます。

次に消費電力です。

\[ W_1 = V_{R1} * I = (100 – 2.2) * 0.02 = 1.956 \]

1.956 Wです。手軽に安価で入手できるカーボン抵抗(1/8~1/2 W)では耐えられなさそうです。たぶん一瞬で抵抗が燃えて終わりじゃないかと・・・

LEDが30個のとき

  1. LEDと抵抗に流れる電流Iは変わらず \(I = 0.02\)
  2. 抵抗にかかる電圧をVR30とすると \(V_{R30} = V – V_{F} * 30\)
  3. 求める抵抗値をR30としてオームの法則よりR30を求める
  4. このとき抵抗で消費される電力W30を計算する

\[ R_{30} = \frac{V_{R30}}{I} = \frac{V – V_{F} * 30}{I} = \frac{100 – 2.2 * 30}{0.02} = 1700 \]

となり、1700 Ωの抵抗を直列につなぐと20 mAの電流になります。

消費電力は

\[ W_{30} = V_{R30} * I = (100 – 2.2 * 30) * 0.02 = 0.68 \]

0.68 W、まだカーボン抵抗では難しそうです。ただ、下図のように1/2 Wのカーボン抵抗を2本使って電圧か電流を分散させれば耐えられる値ではあります。

制限抵抗を直列で合成
直列で抵抗を合成
制限抵抗を並列で合成
並列で抵抗を合成

LEDが50個のとき

  1. LEDと抵抗に流れる電流は \(I = 0.02\)
  2. 抵抗にかかる電圧をVR50として \(V_{R50} = V – V_{F} * 50\)
  3. 求める抵抗値をR50としてオームの法則よりR50を求める
  4. 抵抗で消費される電力W50を計算する

\[ R_{50} = \frac{V_{R50}}{I} = \frac{V – V_{F} * 50}{I} = \frac{100 – 2.2 * 50}{0.02} = -500 \]

抵抗値が負の数になりました。LED 50個のVFの合計が電源電圧を超えているからです。

\[2.2 * 50 = 110 > 100\]

この電源電圧と回路構成で、このLEDを50個点灯させることはできませんでした。(抵抗の消費電力以前のお話でした。)

回路を変えたりすれば点灯させることはできます。

  • 電源電圧を上げる
  • VFが小さいLEDに変更する
  • LEDを25個×2の並列接続にする(下図)
LEDを並列接続

定格電力オーバーの対策

対策として考えられることを思いつくままに書いてみます。(トレードオフは考えてないし、身も蓋もないことも書きました。)

  • 定格電力が高い抵抗を使用する
  • VFが高いLEDに変える
  • 複数個の抵抗で制限抵抗を構成する
  • 電源電圧を下げる
  • 降圧回路を追加して低い電圧でLEDを駆動する
  • 専用のLEDドライバICを使用する
  • PWM制御などで、電流が流れている時間を減らす(平均の消費電力を下げる)

気が向いたらいつか検証するかもです。

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