電流制限抵抗について書いたときに、抵抗の消費電力に触れるのを忘れてました。
例えば、100 V(直流)の電源でLEDを1個だけ光らせるための制限抵抗って小型の抵抗で大丈夫なの?って話です。(あとで計算してみますね。)
電源電圧が高いとか、LEDに流す電流が大きめのときは気にしておいた方がいいです。
目次
- 1. 抵抗の定格電力
- 2. 抵抗の種類
- 3. 消費電力
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- 3-1. 消費電力の公式
- 3-2. 消費電力の計算
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- 3-2-1. LEDが1個のとき
- 3-2-2. LEDが30個のとき
- 3-2-3. LEDが50個のとき
- 4. 定格電力オーバーの対策
抵抗の定格電力
抵抗のデータシートには定格消費電力が書いてあります。一例として、ロームの抵抗のデータシートから定格電力の部分のキャプチャです。
抵抗で電力が消費されるとほぼすべてが熱になります。そして、抵抗が耐えきれないぐらいの電力が消費されると抵抗が燃えます。
抵抗の種類
抵抗の種類と定格電力をざっと一覧表にしました。数値は参考程度に見てください。
種類 | 定格電力 [W] |
---|---|
カーボン抵抗 | 1/8~1/2 |
厚膜/薄膜 金属皮膜抵抗 | 1/16~5 |
酸化金属皮膜抵抗 | 1~5 |
セメント抵抗 | 2~30 |
放浪抵抗 | 5~100 |
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消費電力
消費電力の公式
消費電力の公式はこちらです。
\[ W = V * I \]
上記の公式にオームの法則の式を代入すると別の公式も導かれます。
\[ W = I^2 * R \]
\[ W = \frac{V^2}{R} \]
抵抗の消費電力Wは、電流Iや電圧Vの2乗に比例して増えていきます。
消費電力の計算
冒頭の「100 Vの電源(←直流です!)でLEDを駆動する」ときの制限抵抗値Rと消費電力Wを求めてみます。
- LEDのVF = 2.2 V
- LEDは1個・30個・50個をそれぞれ直列に接続
- LEDに流す電流は20 mA
LEDが1個のとき
- LEDと抵抗に流れる電流をIとすると \(I = 0.02\)
- 抵抗にかかる電圧をVR1とすると \(V_{R1} = V – V_{F}\)
- 求める抵抗値をR1としてオームの法則よりR1を求める
- このとき抵抗で消費される電力W1を計算する
\[ R_1 = \frac{V_{R1}}{I} = \frac{V – V_{F}}{I} = \frac{100 – 2.2}{0.02} = 4990 \]
となり、4990 Ωの抵抗を直列につなげば20 mAの電流が流れます。
次に消費電力です。
\[ W_1 = V_{R1} * I = (100 – 2.2) * 0.02 = 1.956 \]
1.956 Wです。手軽に安価で入手できるカーボン抵抗(1/8~1/2 W)では耐えられなさそうです。たぶん一瞬で抵抗が燃えて終わりじゃないかと・・・
LEDが30個のとき
- LEDと抵抗に流れる電流Iは変わらず \(I = 0.02\)
- 抵抗にかかる電圧をVR30とすると \(V_{R30} = V – V_{F} * 30\)
- 求める抵抗値をR30としてオームの法則よりR30を求める
- このとき抵抗で消費される電力W30を計算する
\[ R_{30} = \frac{V_{R30}}{I} = \frac{V – V_{F} * 30}{I} = \frac{100 – 2.2 * 30}{0.02} = 1700 \]
となり、1700 Ωの抵抗を直列につなぐと20 mAの電流になります。
消費電力は
\[ W_{30} = V_{R30} * I = (100 – 2.2 * 30) * 0.02 = 0.68 \]
0.68 W、まだカーボン抵抗では難しそうです。ただ、下図のように1/2 Wのカーボン抵抗を2本使って電圧か電流を分散させれば耐えられる値ではあります。
LEDが50個のとき
- LEDと抵抗に流れる電流は \(I = 0.02\)
- 抵抗にかかる電圧をVR50として \(V_{R50} = V – V_{F} * 50\)
- 求める抵抗値をR50としてオームの法則よりR50を求める
- 抵抗で消費される電力W50を計算する
\[ R_{50} = \frac{V_{R50}}{I} = \frac{V – V_{F} * 50}{I} = \frac{100 – 2.2 * 50}{0.02} = -500 \]
抵抗値が負の数になりました。LED 50個のVFの合計が電源電圧を超えているからです。
\[2.2 * 50 = 110 > 100\]
この電源電圧と回路構成で、このLEDを50個点灯させることはできませんでした。(抵抗の消費電力以前のお話でした。)
回路を変えたりすれば点灯させることはできます。
- 電源電圧を上げる
- VFが小さいLEDに変更する
- LEDを25個×2の並列接続にする(下図)
定格電力オーバーの対策
対策として考えられることを思いつくままに書いてみます。(トレードオフは考えてないし、身も蓋もないことも書きました。)
- 定格電力が高い抵抗を使用する
- VFが高いLEDに変える
- 複数個の抵抗で制限抵抗を構成する
- 電源電圧を下げる
- 降圧回路を追加して低い電圧でLEDを駆動する
- 専用のLEDドライバICを使用する
- PWM制御などで、電流が流れている時間を減らす(平均の消費電力を下げる)
気が向いたらいつか検証するかもです。
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